顔を抑える老人高齢になると認知症になる人が増えてきます。

同居していても、親は歳からくる物忘れになったと思いがちで、まして時たま親を訪れる人には、物忘れなのか認知症なのかさらに分かりづらいかもしれません。

在宅で7年間介護をする前の2年間は、実家で一人暮らしをしていた80台後半の母を、私は週に3~4回訪れ世話をしておりました。

当時の母の様子を振り返ってみると、認知症はその頃から始まっていたように思われます。

自分の体験から、認知症の症状、認知症と気付きにくい盲点などに関してお話ししたいと思います。

寂しいと言い始めた母

10台後半から生け花を教えていた母は花一筋の人生。

80歳を過ぎてもいけばな界の要職にいて、自宅でも先生クラスの人達を指導していました。

私の家から実家まで片道で約40分。

時々電話をして週末に行こうかと尋ねたりすると「忙しいから来なくて良い」という返事がほとんどで、電話の声からも元気に活躍している様子が感じられました。

そんな母が、89歳頃から「寂しい」と口にするようになり、私も気になって定期的に訪れるようになりました。

生きがいだったものに関心を失った母

自分の仕事を終え夕方に訪れると、最初の頃は、自分も大好物のてんぷらを山のように揚げて、待っていてくれました。

母と楽しいおしゃべりしながらの夕食。

一年ほど経った頃、そんな母に変化が現れました。

まず、教えている以上は勉強しなくてはいけないと、長年参加していた毎月のお花の講習会を、健康であるにも関わらずやめたいと言い出したこと。

お花以外には何も興味は無いと言ってよいほどの母で、講習会に行けば人数は減ってもまだ親しい仲間もいます。

そこから離れると、母の生きがいにも影響します。

やめない方がいいと私は本気で引き止めました。

何度か同じやり取りを繰り返したある日、母がポツンと「近頃はお花をやっていても楽しくないのよ」と言った時には、心底びっくりしました。

母の心の中に何かが起きている、認知症の知識がなかった私は、その心境の変化がどこから来ているのかわかりませんでした。

記憶忘れがひどくなり、怒りやすくなった母

電話をすると「一人だから寂しい、夜が寂しい」と頻繁に言うようになり、孤独感が深くなっていったようでした。

一日置きに通っていたことにも、不都合が生じてきました。

行かない日には朝、「今日は行かない日よ」と確認の電話を入れるのですが、夕方になると必ず電話をしてきて、「今日来ると言っていたじゃない。今後はもう来なくてもいい」と自分の怒りを一方的に伝えて、ガチャンと受話器を切ってしまうのです。

その頃になると、料理をするのは面倒になったようで、私が夕食を作って運ぶようになりました。

私は自宅で仕事をしていましたが、仕事上、海外や国内での出張もあり、そうした時は現地から電話をすることになり、母の世話と仕事の両立は徐々に難しくなってきました。

想像以上に認知症が進んでいた母

ひょっとして認知症なのかなと心配になり、長年母から生け花を習っているお弟子さんの電話番号を調べ、話を聞くことにしました。

すると、私が想像する以上の現実を分かってきました。

稽古日に行くと、暗い顔をして部屋にぽつねんと座っていることがある、活け終えたお花を直してもらうと、とんでもない活け方をすることがある、生け花に関わる大きな新年会に普段着の着物で現れたことがあるなど涙が出てくるような話をいろいろ聞かされました。

一人で置いておくのはもう無理と判断して、その数ヶ月に我が家に引き取ることになりました。

認知症のチェックポイント

在宅で介護を始めた頃、母はしばしば「自分の頭が馬鹿になっている」と、私に不安を訴えました。

自宅に通っていた頃は、そんな話をしなかったのに、その頃には自分の記憶が薄れていく不安を自分でも感じて、そのように表現したのでしょう。

さらに認知症が進むと言わなくなりました。

私が自身の体験から学んだ認知症の症状の表れとは、

  • 物忘れがひどくなる
  • 一人でいることの不安や寂しさをいつもより言うようになる
  • それまで興味があったことに関心がなくなる
  • 被害者意識が強くなる
  • 物事をネガティブに捉えがちになる

でした。

親のそうした症状に対して、こちらが間違いを正したり、しかったりすると余計に不安が募るようです。

母が「自分は馬鹿になっている」と頻繁に言い出した頃、母は私と生活をしていました。

そんな時私はいつも「私はお母さんの傍に一生いるから、馬鹿になったってお母さんはちっとも困らないのよ」と答えていました。

私は事実そう思っていたので、そんな返事をしたのですが、母の感じる不安を小さくする対処だったと今では思います。

とは言っても、日々認知症の親の世話を一人でやっていくのは、精神的に大変なことです。

たまに会う人には認知症が気付きにくい現実

在宅介護を始めた頃、親戚や母の知り合いがたまに訪れると、母はきちんと受け答えをしていました。

認知症の人は、自分がまだしっかりと生活できていると、たまに来る人の前では一瞬、気持ちがしっかりするようなのです。

そうした状況を見た人は、まだ認知症もひどくないと感じてしまうので、介護者の大変さはなかなか理解してもらえません。

これは盲点です。

なるべく親が高齢になった場合は定期的に合うような環境をつくり、いつでも気づけるようにすることが大切です。

親が認知症ではないかと懸念されたら、一人で抱え込まないで、ご自身が住んでいる役所の福祉課などに、すぐご相談してみることをお勧めします。

ライター/auntysunflower