N811_toridashitajyouzai500腸内フローラの働きは美容のためのダイエットだけでなく、医療の現場でも注目されています。腸内細菌を使った新たな治療法開発へ向けて盛んに研究が進められており、糖尿病もその新たな治療法を期待されている病のひとつです。

 

糖尿病の症状

血糖とは、血液中のブドウ糖のことを言います。血流に乗り全身をめぐり、脳や筋肉、臓器など人の体を動かすエネルギーとして使われる重要な物質です。血糖値は、血液中にこのブドウ糖がどのくらいの量が含まれているかを示す値です。体の中の血糖が各器官に運ばれ、適正に消費されるためにはインスリンが必要です。

食事などで一時的に血糖値が上昇すると、それに反応してすい臓にあるβ細胞がインスリンを分泌します。インスリンは血中にあるブドウ糖を、脳や筋肉、臓器などエネルギーを必要とする器官に運び細胞に取り込ませる働きをするホルモンです。
「細胞に血中のブドウ糖を取り込ませる事」により結果として「血糖値が下がる」のです。脳など人体にとって重要な器官にエネルギーを取り込ませるインスリンですが、これと同じ働きをする物質は体内には他にありません。代替のきかない体内物質なのです。

これに対し、糖尿病はインスリンが不足したり、正常に作用しない状態に陥ることを言います。糖尿病には自己免疫性疾患により、免疫が自分自身の細胞を攻撃し、インスリンを分泌するすい臓のβ細胞が破壊され、体内のインスリンの量が絶対的に少なくなる1型と、本来は食事後一時的に高くなるはずの血糖値が体内のインスリンの作用不足により血糖値が下がりにくくなる2型があります。

1型の糖尿病は原因がまだ詳しくは判明していないのですが、2型は生活習慣病のひとつに数えられ、高カロリーな食事や運動不足、ストレスなど生活習慣の乱れによって発症するといわれています。現在、日本の糖尿病患者の95%以上が2型です。

 

2型糖尿病の新たな薬は腸内細菌!

このコラムでも「腸内フローラに住む腸内細菌が肥満を防ぐ」という話を取り上げましたが、そちらで活躍した「短鎖脂肪酸」がインスリンの分泌量に影響がある事が近年わかってきたのです。

短鎖脂肪酸はバクテロイデスなどの腸内細菌が食物を分解するときに生産される物質です。短鎖脂肪酸には肥満を防ぐ効果が期待されており、肥満改善のために有用であると考えられます。
さらに2型糖尿病と腸内細菌の関係には、興味深いものがあります。短鎖脂肪酸の量が減るとインスリンの分泌量も減るという研究結果があるのです。

腸内細菌による治療はこれに着目し、「短鎖脂肪酸を分泌する腸内細菌を増やすことで、インスリンの分泌量を増やせないか」という考えです。糖尿病の専門医、フランク・グリーンウェイ博士が行った腸内細菌を増やす臨床試験で、この効果は実証され、腸内フローラの力を使って糖尿病を改善できることがわかっています。

2014年には日本でも順天堂大学医学部により、2型糖尿病患者における「腸内フローラのバランスの乱れ」が発表されました。2型糖尿病患者は腸内細菌のバランスが崩れ、腸管粘膜上皮のバリアの隙間から、通常では腸内のみに生息しているはずの腸内細菌が血中に流れ出してしまう事が確認されています。糖尿病と腸内フローラ、一見関係がなさそうに見えたこの二つは、実は多大な影響を与え合っていたのです。

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腸内環境の影響は2型だけではない!?1型糖尿病への影響

自己免疫性疾患である1型糖尿病の発症原因は、まだ詳しくは判明していません。ですが、近年の研究結果により、1型糖尿病の発症原因に腸内環境が関わっている可能性が非常に高くなってきたのです。
2008年、科学誌のNetureに「1型糖尿病を発症しやすい系統のマウスを遺伝子操作で腸官免疫システムに手を加えると1型にならなくなった。ところがこのマウスを無菌状態にするとやはり1型糖尿病になってしまった」という発表がされました。

人が持つ免疫細胞の60~70%は腸に存在しています。腸にはビフィズス菌や乳酸菌をはじめとする腸内細菌が常在していますが、食物と一緒に外から細菌などのたくさんの異物も入ってきます。それらの細菌から体を守るため、腸内には免疫細胞が集まったパイエル板に代表される「腸管関連免疫組織」があり、これが腸管免疫です。
腸内細菌がどうやって1型糖尿病からマウスを守っているのかは明らかではありませんが、腸内細菌の抗原によって免疫システムが正常に作動し、自己免疫不全の1型糖尿病が発症しにくくなっているのではと考えられています。

腸内フローラが医療を変える!

糖尿病は1度発症したら完治はしません。ですが血糖値を通常レベルに保つことでコントロールは可能な病気です。腸内環境を改善する新たな医療によって糖尿病の予防、そして現在糖尿病と診断されている方の負担が少しでも減ればと期待をしてしまいます。

糖尿病と腸内細菌の関係はこちらの記事でも紹介しております。
糖尿病と腸内細菌の関係が明らかに!|腸管バリア