車椅子老人ホームには、まだ頭もはっきりして自由に動ける段階でも、先のことを考えて早めに入所する人たちもいます。

そういう状況の人たちとは対照的に、あるとき突然に介護施設に入所しなくてはいけなくなるケースのあり、その多くの場合、特別養護老人ホームの入所待ちをする時間的余裕もなく、民間の介護付き施設を選ばざるを得なくなります。

急に介護施設への入所が必要となる最も多いケースは、とくに足腰などの怪我などにより突然の入院生活がきっかけとなるものです。

病院では治療が一段落を迎えると、リハビリ施設への移動を余儀なくされますので、介護老人保健(老健)施設へ移動することになります。

そこは長くはいられないところで、リハビリ期間が終われば、自宅へ戻るか、老人ホームへの入所を検討することになります。

リハビリ施設としての老健

残念なことに、リハビリ施設とはいっても、「手のかかる入所者は、できるだけ早く出したい」と考える施設が少なくなく、車椅子に頼る以外は健康そのものの老人が1年以上も暮らしていることもあれば、寝たきりに近い状態の人が、せきたてられるように退去させられるという実態もあります。

外科治療の後のリハビリで老健施設に移動した際には、家族が特に気をつけておくべき点があります。

それは処方薬です。

通常は入院先の病院と同じ薬を老健施設でも処方しますが、取引先の製薬会社との関係や在庫状況によって、似たタイプの別の薬を処方されてしまうケースも起こりえます。

痛み止めは劇薬指定

ここで問題になるのは、外科治療の入院からリハビリへ移行した人の多くには、痛み止めが処方されていることです。

痛み止めの薬は劇薬の部類ですので、のどや胃が荒れないように、他の薬と一緒に飲むことがあるほど非常に強いものです。

私の父は庭仕事で痛めた腰痛が悪化して、総合病院で入院治療を受けていました。

二週間で退院予定でしたが、自宅に戻る前に老健施設でのリハビリを勧められ隣接する老健施設に移動しました。

私たち家族が父の洗濯物を取りにいったり着替えを持っていったりしながら、日に数回は施設に通いました。

私の父の異変

そんなある日、「胃がむかむかする」と父が母に訴えましたが、母には理由が分からず何もすることができませんでした。

その数日後、母が父の体を少し拭いてあげようと寝巻きを脱がせたところ、体中に発疹ができていることに気づき、施設側に伝えて対処をお願いしておきました。

その翌日、仕事中の私のもとに母から電話がありました。

「お父さんが意識不明になったの。お医者さんが、家族を呼ぶようにっていったの。急いで病院に来て!」

母の取り乱した声を聞いて私も大きく動揺しながら、片道1時間ほどかかる職場から急いで病院へ向かいました。

病室に駆け込むと、父は集中治療室の中で白目をむき出して、うなり声をあげていました。

そばにいた医師が、

「全身の血液の半分を下血しました。その大量失血により、脳梗塞を起こしたと思われます。予断を許さない状況です」

と説明しました。その後、そばを通りかかった看護師が、

「脳梗塞では、こんなふうにならないんだけどねえ・・・」

とつぶやきました。

その時はその意味が私には分からなかったのです。

処方薬は家族が常にチェックする

以前から父や母が病院から処方された薬の副作用を調べて注意をしてきた私は、父の薬を再確認してみました。

入院中とは違う薬が変わっていたからです。

驚いたことに、それは厚生労働省から厳重注意が出されている極めて強い鎮痛剤でした。

私が施設側に問いただすと、

「実は入院中に服用していた鎮痛剤が在庫切れになっていて、代わりの強めの鎮痛剤を処方しました」

と説明されました。

しかし胃薬と一緒に飲ませることはなく、職員は父の全身に副作用の発疹が出ていたことに気づかず、母が発見したときは、すでに手遅れの状態でした。

私は主治医にそのことを告げ、

「確かに、それが原因で胃に穴があいて、ショック状態になったと思われます」

と認めたのですが、翌日に発言を撤回し、

「お父様は、もともと脳梗塞の可能性があったのでしょう。たまたまタイミングが一致したと思われます」

と言いました。

取り返しのつかない結果を招かないために

私の父は残念ながらまもなく他界しましたが、家族が入れ替わり施設に足を運んでいても起こってしまったこのようなケースは、家族の目が届きにくい状況の入所者の場合、単なる自然発症の病気と片付けられてしまう場合も意外に多いのかもしれません。

最初に述べたように、介護が始まるきっかけは、認知症だけでなく、足腰の痛みによる生活上の支障が原因となることが多いものです。

その際には薬が処方されることが大半です。

どうか、ご家族の方は、薬の知識がないからといって全てをまかせきりにせずに、その副作用を調べて入所中の高齢者の体調等を自分たちでチェックするように心がけてください。

ライター/エンジェル