6be596645037dfe6a3e73a89519f5c12_s特養ホームと民間の介護付き有料老人ホームとでは、地域差だけでなく、それぞれの運営方針や職員の資質によって、項目上のサービスでは分かりにくい、現実的な待遇の違いが見られるものです。

多くの順番待ちの人が控えている特養ホームの場合、対応について強い要求や苦情を言えば、「嫌なら別のところへ行ってください」と言われてしまうのを恐れている家族もいます。

逆に介護職員としては、文句を言われにくいので、民間施設よりも特養で働くことや転職することを望んでいる人たちも少なくありません。

しかし、特養ホームは常に順番待ち。

在宅での介護が無理であった私の親の場合は、特養ホームの順番を待っている時間的な余裕がなく、やむをえず民間の施設を選びました。

施設に預けっぱなしにしない

そこは新設されたところで、開所式では入居者の家族たちが集いましたが、施設長が挨拶の中で強調していたのは、「施設に預けっぱなしにしないで、できる限りご家族が顔を見せに足を運んでください」ということでした。

しかし、それから実際に入居が始まると、来訪者名簿に名前が書かれている常連は、100名の入居者のうち、わずか10家族程度でした。

定期的に訪問し、受けているサービスをチェックする

施設に預けっぱなしで顔を出さない家族はもちろん仕事等で忙しい事情もあるでしょうが、多忙であっても私自身は夜間や週末に時間を作って、雨の日も風の日も、必ず1時間ほどかかる施設に通っていました。

そうすることで、施設の職員の人たちに「この家族はよく訪ねてくるのだな」という印象を与えるためでもありました。

残念なことに、職員個人によって、職業意識や誠意に大きな差があることを(まだ頭がはっきりしている母から)具体的に聞けましたので、受けているサービスの内容をチェックする必要があったのです。

入所から1年ほど経過したころ、最初からお世話になっていた施設長が経営者側と方針が合わないとのことで辞職してしまい、後任の管理職の人たちの中には以前から手抜きをするようになったと母から聞かされました。

ベッドに寝たきりの母でしたが、自分で電動ベッドを操作して、脇のポータブルトイレで用を足すことができました。

その際に安全のために職員の簡単な介助をお願いしていたのですが、あるとき、施設から電話があり、今後のサービスについて相談したいとのことでした。

施設側からトイレの介助を断られる

時間を作って私が面会にいくと、新しい管理職の人たちが私の目の前に座り愛想笑いをしながら、「お母様のことですが、これからはポータブルトイレではなく、おむつにしていただきたいのです」と提案してきました。

しかし私は、

「本人は自分ひとりでもポータブルトイレが利用できますので、女性として、そして人間として、できるだけ尊厳を保った生活をさせたいのです。
おむつですと、すぐに取替えにきてもらえないこともあり、本人は嫌がっています。
どうか、これまでどおり、見守るかたちの介助をお願いいたします。
それに、母はトイレが近いので、おむつ代が高くなってしまうことを非常に気にして、我慢するようになってしまいます」

と、提案を拒むかたちでお願いしました。

すると管理職の一人は、

「申し訳ありませんが、お母様の介護保険料を考えますと、機械浴の時間等も含まれますので、職員ができるサービスの時間の上限を超えてしまっておりますので、トイレ介助はまったくの無料サービスになってしまうのです。
職員の勤務状況からみると、それは難しいのです」

と答えました。

知識をもちクレームではなく正当な要望を伝える

私はそれは変だとすぐに感じて、問いただしました。

「要介護4の母の場合、現時点でサービスの上限を超えるようなことをして頂いているとはとても思えません。
私がいるときも、呼び出しベルを押しても、40分以上待たされることが何度もあります。
機械浴の時間とおっしゃいましたが、車椅子に乗せての移動の時間を入れても、それほど多くないはずですが、まさか浴室の待合室で長い時間放置されているのもカウントされてはいないですよね?
それと、母のところへ愚痴をこぼしている職員の方の言葉が本当なら、どんどん職員が辞めてしまい、人手不足が深刻だというのは事実なのでしょうか?」

すると、私の言葉を聞いた相手の顔が一瞬こわばって、ごまかすような笑みを浮かべて、

「いいえ、職員の数はきちんと規定通り足りております。
ええと、では、ご要望のように、これまでと同じかたちで、ポータブルトイレを利用していただくかたちにしたいと思います。」

と、自身の前言がまるで無かったかのように、すんなりと要望を聞き入れてくれました。

私は心の中で、

「こちらが知識の乏しい素人だと思って、簡単に説得できると思ったのだろうな。」

と推察しました。

このように、施設に対してはクレームを言うという姿勢ではなく、こちら側もある程度の知識を持ち、受ける資格のあるサービスはきちんとお願いするという姿勢がとても大切になってくると思います。

ライター/エンジェル