シニア女性の後姿
一人暮らしをしていた母が我が家に移り住んだのは91歳の時。

きっかけは大腿骨を折り入院したことでした。

認知症の症状も出ていて、それ以前から日常生活に不都合が見られました。

手術後は、転ぶと自力で立ち上がれなくなり、正座も出来なくなりました。

一人で母の世話をしなくてはいけないので、長期介護を覚悟しヘルパーさんやデイケアなども利用して、自分自身にストレスや疲れがたまらないようにしようと考えました。

しかし、7年に渡る在宅介護の期間でデイケアを利用したのはわずか2日。

母がデイケアを受け入れなかったからです。

デイケアはお年寄りの方々には気分転換にもなり、喜んで通うものと私は思っていたので想定外でした。

デイケアを好まなかった母の事例をお話したいと思います。

初めてデイケアのイベント参加

30年近く住み慣れた自宅から私の家に移ったので、環境の大きな変化に母が馴染めないのではという不安が私にはありました。

そこで同居を始めてしばらくの期間、私は日中なるべく母の傍にいるようにしました。

自宅でできる仕事ではありましたが、昼間のほとんどを母の話し相手に費やすと影響が出てきます。

デイケアに母が通ったらいいなと、考えるようになりました。

ある時、ケアマネージャーが、デイケアでお花見のイベントがあると教えてくれました。

介護が始まる前の母は70年近く自宅で生け花を教えていました。

お花が大好きな母ですから、満開の桜の下で他の方々とお弁当を頂くのは楽しいし、気分転換にもなるだろうと、初めてデイケアのイベントに申し込みました。

当日送迎バスが来て、若い男性スタッフが優しく母を誘導してバスに乗せてくれました。

夕方、同じスタッフが送って下さり、別れ際、母はニコニコしながらお礼を言っていました。

きっと楽しい一日を過ごしたのだろうと私も安堵しました。

ウツになった母

しかし、その翌日、母の様子が少し変なのです。

朝から食卓の椅子に座ったまま、テーブルに置いた紙をじっと眺めているのです。

何が書いてあるのかと覗きこんでみると、「○○(私の名)さんに言って、町内会を退会する」とあります。

どうも前日のお花見を町内会の催しと勘違いしているようでした。

イベント中に面白くないことでもあったのかと、ケアマネージャーに確認すると、イベント中は楽しそうに過ごしていたと、スタッフから報告を伝えてくれました。

2度目のデイケア体験

認知症で母も勘違いがあったのかしら、回を重ねれば、デイケアに慣れるのかしらと思い、後日別のイベントに参加させることにしました。

朝夕の送迎時、母の様子は前回と同じで愛想の良いものでした。

しかし、その翌日、母がヘルパーさんに怒鳴っているのが聞こえました。

「そうやって、私に何もさせないようにするんだから」

母がヘルパーさんを怒鳴るのは初めてです。

デイケアは母にあわないようだと私は感じました。

デイケアがあわない理由

デイケアにあわないお年寄りもいるのではと、改めてケアマネージャーに確認すると、そうしたケースもあると教えてくれました。

大きな理由の一つとしては、幼稚園児に話すような言葉遣いでスタッフに扱われるのを好まないお年よりもいるとのこと。

我が家に移り住む直前まで、自宅で花を教えていた母は長年いけばな界の重鎮でもありました。

いつも先生と呼ばれ、毅然とした態度で過ごしてきたので、子供扱いにされるのは母も嫌だろうなと容易に想像できました。

デイケアのイベントで実際にどんな活動がされたのかは良く分かりませんでしたが、通常は、折り紙、塗り絵や、歌、簡単なゲーム、体操なども行われるようです。

そうした内容に興味を抱かない人もいるそうです。

いけばな以外に趣味と呼べるものが無い母も、きっと面白くは無かったのでしょう。

私が住んでいた地域にはデイケアセンターは何箇所かあるので、これに関しては、興味の持てそうな活動をしているセンターを選ぶことも可能とケアマネージャーはアドバイスしてくれました。

ただ母の性格を考えると、それまで他人に気を遣うことはあまりせず、自分中心に生きてきましたので、見ず知らずの他人と一緒に過ごすのは精神的にかなり苦痛であったのかもしれません。

わずか2回の体験でしたが、参加するとそのあと数日間はウツ状態になってしまうので、強制はできないとそれ以降の利用は考えませんでした。

母がデイケアに通えないので、結局自分の仕事は諦めざるを得ませんでした。

根気強くデイケアや趣味を見つける

やはり、デイケアに通えないとなると介護する側の負担が大きくなります。

そういう場合は介護をされる人のためのデイケアだけでなく、介護される人が誰かのためになるような生きがいや趣味を持たせてみてはいかがでしょうか?

今は簡単な内職もインターネット上で見つかりますし、介護される側が弱い立場と決め付けずに一緒にできることを見つけることも大切です。

ライター/auntysunflower