体重計と並ぶ太った人

このコラム内でも「腸内フローラが短鎖脂肪酸を生み出し、その結果肥満を防ぐことができる」という話題を取り上げましたが、そもそも短鎖脂肪酸とはいったいどのようなものなのか、ご説明いたしましょう。

短鎖脂肪酸とは

短鎖脂肪酸とは油脂を構成する成分のひとつです。脂肪酸は炭素が鎖のように連なった構造をしているのですが、連なった炭素の数によって名称が短鎖脂肪酸、中鎖脂肪酸、長鎖脂肪酸と分けられています。
一般的な油は炭素数が12以上の、分子の鎖が長い長鎖脂肪酸によって構成されています。それに対し、炭素数が8~10個のものを中鎖脂肪酸、そのうちの炭素の数が6個以下のものが短鎖脂肪酸と呼ばれています。
身体の疲労回復物質として知られる乳酸も、この短鎖脂肪酸の一種なのです

「中鎖脂肪酸は分解されやすいから体に脂肪がつきにくい」とよく言われておりますが、実は短鎖脂肪酸も長鎖脂肪酸に対して分子の鎖が小さく、また消化経路が異なるため分解されやすい脂肪酸なのです。

短鎖脂肪酸は「脂肪細胞に働きかけ脂肪の肥大を止めるため、肥満を防ぐことができる」というお話は過去記事内でさせていただいたのですが、短鎖脂肪酸にはまだまだ期待されているチカラがあるのです。
そのひとつが食事療法による炎症やアレルギーを抑える効果です。

 

短鎖脂肪酸と制御性T細胞

2013年、理化学研究所をはじめとする共同研究グループの発表により、「腸内細菌が作る酪酸が制御性T細胞への分化誘導のカギ」が発表されました。

酪酸というのは腸内で生産される短鎖脂肪酸の一種です。
制御性T細胞は、体の免疫が体外からの刺激に対しての過剰反応を抑制する、ブレーキの役割をしています。

ある種の腸内細菌によって炎症やアレルギー反応が抑制できるということはわかっていたのですが、そのメカニズムは判明しておりませんでした。
研究グループの発表によると、食物繊維をほとんど含まない食事を与えたマウスと食物繊維を多く与えたマウスを比較すると、食物繊維をたくさん取ったマウスにだけ、制御性T細胞の増加が見られました。

さらに研究を進めると、短鎖脂肪酸の一種である酪酸が未成熟なT細胞を制御性T細胞へと分化誘導させるFoxp3という遺伝子の発現を高めていることがわかりました。

この結果を元に、大腸炎を起こさせたマウスに短鎖脂肪酸である酪酸を与えたところ、制御性T細胞が増えて大腸炎を抑制することができたというのです。

 

短鎖脂肪酸を増やすには

肥満も抑えられて、炎症やアレルギーを抑制させることができるのなら是非とも日ごろの食事の中に短鎖脂肪酸を摂取できるよう組み込んでいきたいところですが、食品としての短鎖脂肪酸は、中鎖脂肪酸や長鎖脂肪酸に対して摂取できる食品が限られている上に、含まれている食品が酢やバターなど、その味や形状故に現実的に大量摂取する事が難しい食品に限られています。

ですので、食品から直接摂取するより体内で生産するほうが有用なのです。
体内で短鎖脂肪酸を生成するためにはひじきやりんご、わかめなどの海草やキウイフルーツに含まれる水溶性食物繊維を腸内細菌に発酵させて作ってもらう事が一番手軽な方法です。

水溶性食物繊維

 

短鎖脂肪酸を生産する腸内細菌は?

短鎖脂肪酸はビフィズス菌ビースリー®をはじめ、多くの腸内細菌が生産します。ビースリー®は善玉菌の代表でもあるビフィズス菌なので問題はないのですが、バクテロイデス属に所属する細菌をはじめ、生産する細菌の多くは「日和見菌」と呼ばれる周囲の環境によって良い働きもすれば、逆の働きもする細菌なのです。

彼らは周囲の環境が悪玉菌優位になると、ほかの悪玉菌にあわせて腸内の食物を腐敗させるなど悪さをします。
そして日和見菌は腸内細菌の中で、数が最も多い割合で存在しています。

ですので、日和見菌たちが悪さをせず、体に良い働きをしてもらう為にも普段からの腸内環境づくりが非常に大切なのです。

出展元:理化学研究所プレスリリース(研究成果)より